vol.24出演者紹介:柴田美波

Birthday:1994/02/28 Birthplace:神奈川県 Height:158cm
特技・趣味:バンジョー、絵を描く、海苔の食べ比べ、読書、ライブ鑑賞(音楽、お笑いなど)、洋服を買う・見る

中学・高校と演劇部に所属。桐朋学園芸術短期大学演劇専攻卒業。2014年文学座附属演劇研究所入所、2019年座員となり、現在に至る。DULL-COLORED POPには『あつまれ!「くろねこちゃんとベージュねこちゃん」まつり』東谷チーム、福島三部作・第三部『2011年:語られたがる言葉たち』にオーディションを経て出演。

近年の主な出演作品は、『てぬるいとげ』(projectさざめき)、『フランドン農学校の豚~注文の多いオマケ付き~』(座・高円寺)、『SEVEN・セブン』(文学座オフアトリエ企画)、『首切り王子と愚かな女』(PARCO)『怪談牡丹燈籠』(文学座)など。

Contents

Q1.演劇・俳優を始めたきっかけ:「男役の先輩がめちゃくちゃ格好よくて!」

中学校に入学してすぐに文化祭があって、新入生はその時に各部活動の催しを見てどこに入りたいか決める流れでした。

特に入りたい部活も決めてなくて、友達と同じ所でいいかぁ~と考えていた時に、演劇部の公演を観たら、それがとっても素敵だったんです。女子校なので宝塚をベースにしていて、男役女役があるのですが、その男役の先輩がめちゃくちゃ格好よくて、観てすぐにミーハー魂全開で「演劇部に入りたい!」と思いました。それが、始めたきっかけです。

あと、学校の講堂なので、今思えば大した事なかったと思うんですけど、照明や音響の雰囲気も鮮明に記憶に残っています。圧倒されたというか、今まで体験した事がなかった未知の世界が、凄く魅力的に映ったんでしょうね。

俳優になろうと思ったきっかけというか、もっと真剣に芝居に向き合いたい、勉強したいと思ったのは、短大2年の時に試演会を演出して下さった、井田邦明さんとの出会いでした。

その時にひたすら、表面だけで演じる事のつまらなさを言われました。目の前に起きている事に心を動かさず、なんとなく形だけで、自分一人だけで演技してる風。その時はそれが演技だと思っていたし、言っちゃえば、いかに良い感じに台詞を言うか、それが大事、みたいな。

それを井田さんがボコボコに砕いてくれて、色々な方法を通して面白いとはなにかを教えてくれました。あの時に頭を使って、体を通して延々考え続けた時間は、自分の中でかなり大きな出来事でした。

Q2.好きなor影響を受けた俳優:「 Patsy Ferran 、寺田路恵」さん

好きな俳優はPatsy Ferran。NTLiveの『Treasure Island』で初めて観て、演技の巧さは勿論ですが、姿や声、唯一無二の存在感に魅了されて大ファンになりました。どうしても生で観劇したいと思い立ち、一人でイギリスに観劇に行ったくらい、大好きで憧れの存在です。

あと、文学座の大先輩である寺田路恵さんは、敬意を込めてですが、本当に化物だと思います。その場に存在する、居る、その説得力が尋常じゃない。そして、見えないものが見えて、聴こえないものが聴こえている、第六感みたいなものを確実に持っている方。お芝居を拝見する度に、なにをやってるんだと頬を叩かれる気持ちになります。私がやっているのは演技じゃない、と不安になるくらい圧倒的です。

俳優に限らず素敵だと思う方って、皆キュートで、チャーミングで、ミステリアスな方だなぁと答えていて思いました。

もっとキュートでチャーミングでミステリアスな人間になれるように頑張りたいです。

Q3.役作りや稽古の準備のはじまり:「フラットな状態で一気に。全体を読むようにする」

まず最初に台本を読む時は、出来るだけフラットな状態で一気に読むように心掛けます。役が決まってから読む時は、特に気を付けます。そうしないと、私はすぐに自分の役の視点だけでしか読めなくなるので、全体を読むようにする。

とりあえず一回そうやって読んだら、それ以降は適当に好きなように読みます。好きだなぁと思うシーンを何回も読んだり、もう一度フラットに読んでみたり、軽い気持ちで、適当に自由に。

そこから、戯曲に書いてある確実な設定を書き出したり、分からない所や違和感がある所を全てピックアップしたり、状態や目的をはっきり言語化する等、掘り下げて土台を作る作業をひたすらにする。

あとは、作品や役を信じられるようになるまで、あの手この手を使ってアプローチをします。必要だと思ったことはとにかくやってみて、ひとまず稽古初日に臨んで、本番まで試行錯誤を重ねる感じです。

Q4.今回、俳優として挑戦したいこと:「 相手役の為にどこまで出来るのか。考え、試し続けたい 」

自分は結局自分だけど、そこをスタート地点として、キャサリンという役に出掛ける為にどれだけの事が出来るか。黙って立っていてもその役でいられるようにする為には、なにが出来るのか。

そして何より、相手役の為にどこまで出来るのか。初心にかえって、考え、試し続けたいです。

あとは、絶対に心を閉じない事。家族という関係性や、ハルとも触れ合う場面があったり、色々な意味で親密な、近い距離感が必要だと思います。それがないと、離れる事が出来ない。

私は、物理的にも精神的にも人との距離が近い事に少し怖さがあります。と、同時に憧れがもの凄くあるので、変に固くなってぎくしゃくしてしまう事が、今まで何回もありました。

今回は、その怖さや抵抗感を無視しないで、きちんと認める。その上で、ひたすらに心を開き、皆を信じて一緒にどこまでも面白さを追求していきたいです。

Q5.演技・演劇について最近考えたこと:「 五感を総動員して体験する、受信する、その重み 」

自粛期間中に先輩に教えてもらって読んだ、別役実さんの『舞台で遊ぶ』という本が、とってもとっても面白かったんです。

「演劇を、おすすめする。ただし、『何故か』と聞かれたら、『わからない』とお答えする以外にない。」から始まり、色々な観点から演劇について書かれているのですが、中でも、情報化社会に生き、我々自身も一個の情報として情報の海を漂う存在である、そんな時代だからこそ、演劇が持つ独自の情報伝達手段を見直してみる、みたいな、そんな段落に書かれていた文章に、首がもげる程頷きました。

やっぱり自粛期間中、演劇や俳優という存在についてぐるぐる考えすぎて、「演劇ってなにが面白いんだっけ。俳優って職業はなにが凄いんだ」ってなった瞬間があったんです。その時に読んだものですから、そうだそうだそうだった!って気持ちになったし、自分の中でも言語化出来ていなかったものが、分かりやすく的確に文章にされていて、読んで良かったと心から思いました。

テレビや映像の良さは勿論ある。だけど、演劇に限らず、音楽やお笑い、洋服を買うとかご飯を食べるとかなんでも、その場に行って、五感を総動員して体験する、受信する、その重みというか、実感みたいなものは、他のものでは得られないなにかだと思うんです。

家でなんでも済ませられるのは楽だけど、でもなんだか全部が薄~く、軽~い感じになっちゃうから、今日も刺激的なものを求めて外に出ようと思います。勿論コロナには気を付けて。

Q6.俳優としての座右の銘:「 文字を言葉に出来る人間/俳優の修業は、人間の修業 」

「文字を言葉に出来る人間を作らなきゃいけない」
「俳優の修業は、人間の修業」

この質問があって過去のノートを読み返してみたんですけど、改めてこの二つはドキッとしたし、これからも意識し続ける言葉だと思いました。

一つ目は高瀬久男さんの、二つ目は坂口芳貞さんが授業で引用した岸田國士の言葉です。

お二人とは、ほんのは少ししか関わる事が出来なかったのですが、劇団の研究所の授業で仰っていた事が、今ようやく少しずつ身体を通して分かり始めたり、分かったとしても出来なかったり…。その時に言われた言葉の数々は、今もこれからもずっと課題です。

お二人が思わず『いいね、面白いね』と笑って言っちゃうような演技が出来たらいいなぁといつも思います。

Q7.最後に自由にメッセージを:「 今までで一番深い所まで潜っていきたい 」

個人的な感覚ですが、稽古を重ねていく事って、どんどん深い所に潜っていく感覚に近いんです。フリーダイビングみたいな。泳げないし、海怖いし、スキューバダイビングとかもした事ないんですけど。

今回は、今までで一番深い所まで潜っていきたいし、最深部まで潜っていかなければならない作品、役だと思っています。きっと暗くて怖いし、すごく苦しいかもしれないんですけど、ぎゅっと目を瞑らないで、むしろ見開いて色々なものを発見していければ、どんどん面白くなるだろうと思っておりますので、是非ご期待ください!

あと、3チームそれぞれ、全然違う雰囲気になりそうな予感がしますので、そこも注目ですね。

シンプルに、いいお芝居観た! お金払って良かった!と思って頂けるように全力を尽くしたいと思いますので、どうぞ一つご贔屓に!

よろしくお願い致します!

* * *

演出家コメント

僕が心から信頼する俳優です。ずいぶん年は離れていますが友達だと思っているし、これから末永く演劇に取り組み、考え続けていく仲間になれたらいいなと思っています。

福島三部作は男三兄弟の話ですが、第三部だけラストで主役交代、彼女の演じた女性記者・おだまりちゃんにバトンタッチしました。すごく気に入っているラストです。僕は当て書きはしませんが、俳優にインスピレーションをもらって台詞や展開を思いつくことは多々あります。柴田さん(僕はみーちゃんと呼んでいますが)の力強くポジティブな人柄が、どう考えても悲劇と混沌で終わりそうなあの作品群を前向きな言葉で終わらせるヒントをくれました。みーちゃんのおかげです。

そして、よく知った間柄のはずなのに、今回のオーディションで見た彼女のアクトは非常に意外で新鮮なものでした。こういうことを書くと失礼かもしれませんが、書類を受け取った段階では「確かにすごくいい俳優だが、キャサリンではないだろう」と思っていたのです。

「役者にはニンがある」なんて歌舞伎の世界では言いまして、向いてる役と向いてない役があると言う。技術だけじゃなくて個性や容姿も大事ですから、向き不向きはどうしてもあるんだと。物心つく前から演技を研究し続けている歌舞伎俳優でさえ「ニンがある」「向き不向きがある」なんて言うんだから、五年や十年しか稽古してない現代劇の俳優が「ニン」から逃れられるはずがない。僕はいつもそう思っていました。

しかしオーディションで見た彼女は、僕の全く知らない女性でした。こんな側面もあったのか? それとも役作りをよほど研究したんだろうか? あるいは僕が思っていた以上に、やはり柴田美波は「できる」女優なのか? こういう「ニン」も持っていたのか? ちょっと圧倒されてしまいました。すでに柴田美波をご存知の方も、ちょっと違う彼女が観れると思います。ご期待下さい!

才能ある若者と、お互いの専門分野について語り合えるのは本当にワクワクします。何か新しい着想、発見が、彼女とのワークからは見えてくるかもしれない。彼女の存在がかつて僕に明るいラストを書かせてくれたように、彼女のアクトが新しい『プルーフ/証明』を生み出してくれるかもしれません。

谷賢一(翻訳・演出)

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DULL-COLORED POP『プルーフ/証明』は2022/3/2(水)~3/13(日)、王子小劇場にて上演されます(配信あり)。

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