vol.24出演者紹介: 竪山隼太

Birthday:1990/05/07 Birthplace:大阪府 Height:181cm
特技:タップダンス・カメラ
趣味:絵画、映画鑑賞 資格:普通自動車免許

出演舞台

2021年:オンライン リーディング公演『白いウサギ、赤いウサギ』、桐山知也 演出 『ポルノグラフィ』、石丸さち子 演出 ミュージカル『マタ・ハリ』、岩松 了 演出『雨花のけもの』、上村聡史 演出 『ガラスの動物園』

2020年:小川絵梨子 演出 『作者を探す六人の登場人物』、眞鍋卓嗣 演出 『少年Bが住む家』、桐山知也 演出 『彼らもまた、わが息子』、永井愛 構成/演出 朗読劇『立ち止まる人たち』

2019年:吉田鋼太郎 演出 彩の国シェイクスピアシリーズ第34弾『ヘンリー五世』、サイモン・ゴドウィン演出『ハムレット』、眞鍋卓嗣 演出『朝のライラック』、藤田貴大(作)/井上尊晶(演出)『蜷の綿 – Nina’s Cotton -』リーディング公演

2018年:藤田俊太郎 演出『Take Me Out 2018』、瀬戸山美咲 演出『ジハード-Djihad-』、蜷川幸雄 演出『NINAGAWA・マクベス』@ニューヨーク公演、古城十忍 作/演出 『善悪の彼岸』(主演)

2017年:蜷川幸雄 演出『NINAGAWA・マクベス』@ワールドツアー(香港、ロンドン、プリマス、シンガポール)、岩松 了 作/演出『薄い桃色のかたまり』、眞鍋卓嗣 演出 朗読劇『朝のライラック』

2016年:蜷川幸雄 演出『リチャード二世』@ルーマニア クライオーヴァ“国際シェイクスピア フェスティバル”、蜷川幸雄 演出『尺には尺を』、藤田俊太郎 演出『Take me out』

2015年:蜷川幸雄 演出『リチャード二世』ヘンリー・ボリングブルック役、岩松 了 作/演出『青い瞳』

2014年:蜷川幸雄 演出 2014年・蒼白の少年少女たちによる『カリギュラ』、蜷川幸雄 演出『わたしを離さないで』、蜷川幸雄 演出『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』

2013年:蜷川幸雄 演出『2013年蒼白の少年・少女たちによるオイディプス王』、蜷川幸雄 演出『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』、蜷川幸雄 演出『ヴェニスの商人』バルサザー役

2012年:蜷川幸雄 演出『2012年蒼白の少年・少女たちによるハムレット』ギルデンスターン役、蜷川幸雄 演出『ボクの四谷怪談』奥田庄三郎役、蜷川幸雄 演出『THE FACTORY ロング・グットバイ』ビル役

2010年:蜷川幸雄 演出『ガラスの仮面〜二人のヘレン〜』ヒースクリフ役、蜷川幸雄 演出『美しきものの伝説』

2009年:蜷川幸雄 演出『真田風雲録』猿飛佐助役

2000年:劇団四季『ライオンキング』ヤングシンバ役

T V
2021年:ABC『ジモトに帰れないワケあり男子の14の事情』(~episode5 いえないふたり~)
2020年:NTV『DASADA』
2016年:NTV『High&Low』1~3話
2015年:EX 金曜ナイトドラマ『天使と悪魔・未解決事件匿名交渉課』第6話、C X 『南くんの恋人~my little lover』
2014年:TX 水曜ミステリー9『ソタイ』

映画
2019年:蜷川実花 監督『人間失格 太宰治と3人の女たち』
2002年:REDSHADOW/赤影 監督:中野裕之 少年時代青影役

Net Movie
2017年:AbemaTV 『特命係長 只野仁 AbemaTVオリジナル 1話』
2014年:Bee TV『C級さらり~まん劇場』「新人」「派閥」「無礼講」「二次会に誘われない」

Contents

Q1.演劇・俳優を始めたきっかけ:「小学校受験の事件と、NHKの児童劇団 」

幼稚園の時に「頭の良い小学校を受験する!」って言いふらしてた男の子がいて、負けず嫌いだったので、じゃあ俺も受験したるわ!って親巻き込んで受験したんです。結果、1次試験は勉強と面接で合格。その男の子も受かってて。「これからよろしくね!」って和解もしたんですが、最終試験が体育館でその合格した受験生の中からくじ引きで数人だけ落とすというものでした。数人しか落ちないくじ引きをきちんと引き当てた僕は不合格になりまして。「意味わからんわ!ふざけんな!」って小学校の校門にしがみついて号泣してる僕を親が引き剥がすという事件がありました。

小学生になって廃人みたいになってる僕が教育テレビの『いってみよう やってみよう』を観ていると幼稚園の知り合いがそこに出てたらしく、「出たい」と言ったそうです。このままだと確実にグレると思った親は好きなことをやらせようと決めていたらしく。両親は全くその世界のことがわからないから月謝が1番安かったNHKの児童劇団に入れることにしました。

そこは舞台をメインに活動していた児童劇団だったのですが、合宿があったり優しい先輩や厳しい先生たちと一緒に過ごす時間がとても楽しく、演劇に取り組むようになりました。

Q2.好きなor影響を受けた人物:「蜷川幸雄」

たくさんの俳優さん、演出家さんをリスペクトしすぎてここに全員書けませんが、1人あげるなら蜷川さんです。今ある出会いのほとんどが蜷川さんのおかげです。僕の師匠です。

あれだけ大好きで大嫌いになった人は蜷川さんを置いて他にいません。蜷川さんがシェイクスピア、チェーホフ、テネシー、唐十郎さん、岩松了さん、寺山修司さん、三島由紀夫さん他、多岐にわたって演出されており、俳優も一流の方たちと仕事されていた現場に出演したり、見学させてもらってたことが本当に今に繋がってると思います。

演劇の正解は人の数だけあるという、視野を拡げてもらいました。また過去を振り返らず、今までの自分をぶっ壊して、新しい演出に取り組む背中は俳優というより、人として尊敬します。もちろんその分クッソみそにいじめられたので、今もきちんと恨みは持ち合わせてます。俳優のメンタルをボッコボコにして俺の現場に芝居で勝負しに来いという人だったので正しい恨みの持ち方だと思います。圧倒的感謝と圧倒的憎しみが同居する稀有な人が僕の師匠です。

Q3.役作りや稽古の準備のはじまり:「法的に可能であれば、体験できることなら体験してみる」

僕の場合は、法的に可能であれば、体験できることなら体験してみます。やってみないとわからないので。そのシーンの場所に行ける時はその土地をぶらーっとあるいてみたり。

歴史上の人物をやる時は勉強しすぎないようにします。戯曲がそもそも虚構なので、戯曲に書かれてある人物の関係性と感情を追います。最後の仕上げのタイミングで知識を入れます。知識が邪魔して感情がノッキング起こして大変なことになった作品が過去にありました笑

いただいた役をなめないこと。セリフを一言しか言わないいわゆるアンサンブルでも、2.3ページ喋る役でも人間を演じることに変わりありません。僕はセリフを覚えて相手役の方と対峙しないとわからないことがたくさんあるので、セリフは早く覚えたいタイプです。

あとはこれが役作りかわかりませんが、日常生活をきちんと送ることを大切にしています。仲間を大切にする、親と喧嘩する、人を好きになる、嫌いになる、人と酒を飲んで笑う、友達の舞台をみて応援して、嫉妬して、よしがんばろって思う。結局のところ日常の自分本体が人間として成長しないと非日常でチョイスする自分の芝居って変わっていかないんじゃないの?って最近思ってます。

出会いを大事に、竪山隼太の人生を楽しんで、それを役に載せて遊ぶことにしてます。

Q4.今回、俳優として挑戦したいこと:「せっかく劇場のサイズが小さいので、そのサイズでしかできない表現ができたら」

せっかく劇場のサイズが小さいので、そのサイズでしかできない表現ができたらいいなと思います。小さい劇場が僕はみるのもやるのも大好きなんです。もちろん大劇場が嫌いということはありませんが。それぞれの長所短所があるので。今回はより近くでお客さんにお芝居を届けることができるので、細かく細かく作って行けたらいいなと思います。

個人的な目標はハルの心の流れを繊細に汲み取ること。それっぽくやろうとしたら出来ちゃうので、それっぽくやらない。出る前にどういう状態なのかを常に考える。あとは共演者や谷さんがなにを見せたいかによってもチョイスする芝居が変わってくると思うので、そこらへんを柔軟に敏感に反応していきたいです。

提示はする、ダメだったら捨てる、チャレンジする、を繰り返して本番ではここまでやって無理ならもういいやってプラン捨てて自由になるぐらいまで稽古で煮詰めたいです。

Q5.演技・演劇について最近考えたこと:「演劇はマイノリティである」

演劇はマイノリティであるということ。

現実です。本当に悔しいけれど。演劇がもっと盛り上がるためにはどうすればいいんだろうと日々考えてます。やっぱチケット代が高すぎるのかなぁ。でも人間がライブでやってるものだから下げるのも限界ありますし。

俳優個人は結局、与えられた役を一生懸命頑張っていい作品を生み出すという当たり前にしか戻ってきません。

社会への話題作り、影響力が、唐十郎さんや寺山修司さんや蜷川幸雄さんやつかこうへいさんや浅利慶太さんたち他、偉大な先人の方々が上手だったんだろうなって思います。小劇場ブームですら僕は生まれてないので。なんでこんなに下火になっちゃったんだろう。寂しくないですか? 谷さんほんと演劇界どうなっちゃうんでしょうか。続きは飲みの場でですね。本当に悔しいんですよね。寂しいんです。

Q6.俳優としての座右の銘:「『 自分を疑え 』 、『引き算をきちんとする』、『芝居しないこと』」

「自分を疑え」蜷川さん
もちろんこの役はこうだと思って取りかかるのですが、たいてい、というかほぼほぼ、現場で変わります。なんなら固定概念が邪魔してくることもあります。これでいいわけないと思いながら稽古に臨みます。

「引き算をきちんとする」蜷川さん
足し算はきっと簡単なんです。この役演じたからとか勉強したからとか。誰かによかったよって褒められたり。いやそうしたことはもちろん嬉しいし、自信にはなるのですが、きちんと引き算をする。自信過剰になりたくないというか。もちろん譲れない部分はあるのですが。バランス感覚をきちんと保ちたいです。だって所詮僕程度の俳優ですから。でもなめられたくないから死ぬ気で頑張る。それだけです。

「芝居しないこと」自分
芝居するんですけど、芝居してない無意識状態を意識するお芝居ができたら最高だなと思います。たまたま喋った言葉がセリフだったみたいな。そうなれたら素敵だなと思ってます。

Q7.最後に自由にメッセージを:「俳優としてこんなに気持ちいい試練はないと思います」

『プルーフ/証明』台本を初めて読んだ時、ハルをやりたいと思い、オーディションを受け、やれることになりました。

何卒観にきてください! せっかく3チームもあるので、どうせなら他のチームよりぶっちぎりで面白いって言われるプルーフになれたらいいな。他のチームと見比べていただくのも一興です!!! 初王子小劇場で楽しみです! 素敵な共演者と谷さんとで面白いもの作れるように稽古頑張ります!!!

渡邊りょうさん、森準人さん、阿岐之将一さんが友達なのですが、彼らをきっかけに初めて福島3部作を観劇させていただきダルカラを知りました。

ですがこのオーディション自体を教えてくれたのは、今回同じ合格者の水口早香で「隼太にこの役合うんじゃない?」と教えてくれました。せっかく僕もさわかも受けるし、じゃ、公民館で練習しようといって公民館借りて読み合わせ兼オーディション対策をしました。そのさわかと一緒に受かったのはなんかエモいです笑 僕らが一緒にできるのかまだわかんないけど笑

たまたまですが、今上演している『ガラスの動物園』という4人芝居から『プルーフ』の世界に入れるのも何かのご縁かなと。当たり前ですが4人芝居は1人1人のセリフが多い!でもその分1つの舞台で得られる経験値が3〜5倍あると思ってます。はぐれメタル的な。

さらにレベルアップしたいです。俳優としてこんなに気持ちいい試練はないと思います。

* * *

演出家コメント

僕は蜷川さんとお会いしたことは一度しかありませんが、作品や著書からは大いに影響を受けているのでそのことについて書こうかと思いましたが……やめました。上記位の「演劇はマイノリティである」という欄に僕への問い掛けが書いてあり、しかもそれが最近僕が考えていたことと全く同じなので、そのことについてほんの少しだけ応答します。

わかります。演劇、まったく流行ってない感がすごいです。コロナ云々関係なく、完全にネットメディアやYouTubeに食われてしまった。コロナであれだけ演劇が叩かれたのはどういうことだったのか? もし演劇の良さ・素晴らしさを知っていたり、知ってる人が身近にいたら、あんなに演劇は「不要不急だ」「やめちまえ」とは言われなかったでしょう。

つまり演劇はマイナーである。演劇人も、観客も、マイノリティである。悔しいけれど認めるしかなさそうです。

かつては様子が違いました。例えば60年代から80年代にかけて、何も持たない、しかし表現欲求を持て余した若者が、手っ取り早く自分の声を多くの人に届けようと思ったときに、演劇は最強のメディアでした。出版は時間がかかるし、テレビで自由に喋れるはずがない。演劇ならできる。60~80年代なんて、国内でも演劇が最も先端的な表現だったんじゃないでしょうか。三島由紀夫亡き後、村上春樹や村上龍が出てくるまで、演劇界が抱えていた作家の顔ぶれを思い返すと凄いですよね。別役実、寺山修司、唐十郎、清水邦夫、井上ひさし、つかこうへい・野田秀樹・鴻上尚史……、これはもうどう考えても文学としても芸術としても演劇が最強の時代だった。世の中を変える力もあった。少なくともそう信じられていた。だから蜷川さんもああいうデビュー作を作ったんだろうし、『千のナイフ、千の目』なんて本を書けたわけで。小川絵梨子ちゃんや上村聡史さんは明らかに優れた演出家ですが、彼らのところにでさえ懐にナイフを忍ばせた青年は歩み寄って来ないでしょう。もちろん僕のところにも来たことはありませんから、蜷川さんの言葉は警句としては素敵ですが、実感からは遠くなっています。

演劇流行ってねえなあ。悔しいなあ。じゃあどうする? 毎晩考えます。その度にいろんな結論に辿り着きますが、以下のようなことをよく考えます。

1.流行ってないが、だからどうした、価値とは関係がないし、消えることはない。「売れてるものがいいものなら、世界で一番うまいラーメンはカップラーメンだ」。甲本ヒロトの言葉ですが、その通りです。昔野田秀樹さんも言っていました、これだけオンラインが流行っても演劇は消えることはないし、むしろその価値を増していくだろう。確かに今、ネットでいつでも繋がれる時代だからこそ、対面・直でのコミュニケーションの価値が見直され、演劇=時間と空間の共有の芸術に価値を見出す人も増えている。

2.流行ってないが、だからと言って、流行りを付け焼き刃で追い掛けても、本当に世の中を変えるような表現を生み出すことはできない。ならば何をするか? 流行ってなくても、評価されていなくても、見くびられていても、軽んじられていても、世間とは関係なく、自分が本当に興味が持てることに全力を費やす。良い意味でガラパゴス化していくんです。日本だって断絶・鎖国した結果、浮世絵とか歌舞伎なんていう世界レベルで通用するヤバい表現を生み出せた。安易に流行りに合わせずに、自分が一生かけて付き合える対象と向き合い続ける。

もうかれこれ30年も流行っていない、というのは、私たち個人の人生からすると長過ぎる時間です。しかし人類全体、文化・芸術の歴史として考えたらあっという間、何でもない時間です。この程度で腐ってはいけない。私たちはテスピスやアイスキュロス・ソフォクレス・エウリピデスからバトンを受け取っている。そして(西洋)演劇は、ローマ以降ルネッサンスまでの約1000年間、ほとんど上演されない暗黒期さえ乗り越えてきた。私たちはそういう芸術に自分の奉仕しているのですから、この30年の不振は犬に噛まれたとでも思って忘れて、むしろこの先の30年に良い種を撒けるように、変わらず演劇を信じ続けるのが良いのではないでしょうか。

つらいけど、頑張りましょう。今、僕たちの手の中にあるバトンを落とさずに次の世代に渡すためにも。

谷賢一(翻訳・演出)

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DULL-COLORED POP『プルーフ/証明』は2022/3/2(水)~3/13(日)、王子小劇場にて上演されます(配信あり)。

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