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百花亜希インタビュー

──自己紹介からお願いします。

百花:ダルカラ劇団員の百花亜希(ももかあき)です。兵庫県神戸市出身です。

──ダルカラの二年ぶりの再開公演についてどんなお気持ちですか?

百花:う~ん。まぁ楽しいですね。ダルカラの作品の作り方というか、私がダルカラに関わるようになってから、谷もそうだし他のメンバーも多少なりとも変わっていって。そういう意味ではすごい変化は感じるし、また2年ぐらいブランクがあってまた再開するってなって、もちろん自分が変わったせいもあるけんちょも、いい意味ですごく楽しいです。

──ご自身で何か変わった感じはあるんですか?

百花:自分ではありますね。何が変わったって具体的に言うとあれだけども(笑)。俳優として休止中の2年の間に何か習得してやるぞとかそういう目標は別になかったんですけど。ただ自分が俳優をやっていく上でいつも変わらないものというか変われないものというか、もっと色々武器を手に出来たらいいなってすごく思ってっから、どれか一個って言葉にするってよりかはダルカラの劇団員として、この2年の間にしっかり成長出来てたらいいなってすごく思いますかね。劇団休止中にもケンケン(大原)、東谷さんとは一緒に演ったこともあるんですけど、ちょうど2年空いてみんなとも久々に演るんでね。

何が変わったって言ったらわかんねぇけんども(笑)……そうですね。何が変わったんでしょうね(笑)。人間的にというか俳優としてかな? もうちょっとリラックスを大事にしてるっていうかフラット? そこを大事にしているところはあるかもしんねえなっと思いますね。

私どっちかって言うと緊張しいなんで、そういうのが嫌なんですけど、そういう自分も認めてそれもしょうが無えなっと思いながらなるべく普段の状態と変わらないで演れたらいいなっと思ってて。自分と戦いながら……と言ったら格好良すぎるけども、昔よりかは肩の力が抜けているんじゃないかな? と思います。

──谷さんとか他の劇団員は変わった印象はありますか?

百花:あー、谷は変わったんじゃないかなと思いますね。

──穏やかになったとか?

百花:ある意味では丸くなった感じはしますかね。うんうん。他の劇団員はどうかな? そんなに変わったようには見えないかな。もちろん、ある部分ではみんな色々やってきてたから成長してるんだろうなと思うんですけど、なんかスタンス的にはそんなに変わったっていう感じはなくてやっぱ、一番は谷かな。

丸くなったっていうか演出家として成長した気がしますね。俳優との付き合い方とか。俳優に耳を傾けるというか、人として大人になったっていうか。
いや、わかんねぇけんども……そんな気はしますかね。

──今回、若者4人がオーディションで入っていますがその方たちの印象は?

百花:まだそんなに深く付き合ってはないんですけど、でもみんな役にはあってるかなっていう感じはしますね。各々の個性だったりお芝居の感じだったりとか居方とかで、みんなすごい一生懸命やってるし真っ直ぐだし、初参加なんですけどダルカラのこと好きなのかなって思います。

もちろん、各々に課題はあるんだっけんども頑張ってやろうとしているし、好感が持てるしある部分尊敬もしていますね。

──今回メンター制度があるって話ですけど。

百花:はい。私、丸山担当です。

──先日、丸山さんにインタビューした時に「百花さんに似ている部分があるのかも」って伺うと「そうかもしれないです」とおっしゃっていたのですが、百花さんから見てどうですか?

百花:そうですね〜丸山見てると、そうなっちゃう気持ちがわかるなって部分はあります。でも、私もお年寄りになってそれじゃいけねえなって部分もすごくあって、それこそ私が芝居はじめた頃、私にとっての月影先生である「木野花」さんと一緒に作品を作ってた時があって、その時「あんたは心が閉じてんだよ」って言われて、若い時はわかんなかったんですけども何年か経ってすごくその意味が分かるっていうか感じる気がするの。

丸山見でっと、谷が稽古中に言ってたことだと思うんですけど「謙虚なところがあるのはいいけども……」みたいな指摘とかね。まだ若いし先輩の人たちと一緒にやるから緊張するし「私なんかまだまだ出来てねぇ」みたいに自分を下にしちゃうとこがあって、そういうところは私と似てるんですけど、それはそれで事実として認めてもやる。そういう自分もひっくるめて観せる。恥をかく。ってとこまで行かないと違うんでねぇかなっと「なりたいと思ってる自分と実際の自分が違ったとしても、今の自分を認めた上で殻に閉じこもらない様にしないと何も生まれない」というような話をした気がします。

ほんとは苦手なんですよ。私はどちらかってぇと後輩の立場でいる方が楽だから……。面倒見てほしいタイプであんまり見本みせる的なことは好きじゃないんですけども、しょうがねえ! じゃないですけど、ある意味自分が後輩でいたがってる自分に言い聞かせる。それをすることで自分にもプラスになるいい機会だからっと思って頑張ってます(笑)。

──今回の作品は原発とか東日本大震災がテーマになっているので、2011年3月11日当時の記憶を聞かせていただけますか?

百花:その日は……私、そんなに明確には覚えてなくて……なんか消したいと思ってんのかわかんないんですけど。家にいたことは家にいて、すごい地震でそこからの記憶があんまなくて。普通、いい大人だからあると思うんですけども、私なくて……家にいたことは覚えてんですけども。

あと、稽古中だったってことも覚えてて……。私、阪神淡路大震災の時は兵庫県にはいなかったんですよ。引越しててそん時は大阪にいて……すげえ揺れを感じて、大阪はほぼ地震のないとこだったんであんな大きなことになってると思わなくて。どっちかっていうとそっちの方を繊細に覚えてる。直撃ではなかったけど東京でそういうことがあって、でもなんだろう。

私、神様って都合良い時にいるって思ってるタイプで、普段はクリスチャンでもないし他の何か信じてるわけでもないんですけど、何なんだろ! って思って。なんか本当に悪くて人殺しするような人とかに天災があって死んじゃうみたいのだったら、ある意味天罰的な感じでしょうが無いかなと思うんですけど。何の罪もない人がああいう天災にあう。最初は津波、その後は原発の問題が出てきて。関西の時はやっぱり近かったからおばあちゃん家のこととか近所で色々あったんですけど、3・11の時は身近っていう意味では何もなかったんですよ。

なんだろう? 関西の時より大人になってたから、人間が立ち向かえないってことに対しての苛立ちというか絶望感があって、ずっと泣いてたなって記憶。特にピンコンピンコンっていう音(緊急地震速報)がすごく嫌いで、人間って無力だなって。
でも、色々知りたいからテレビでニュースとかをとにかく見てて、地震のこととか今の状況が放送される度にずっと泣いてました。

稽古中で本番を控えてたんですけど、もしかしたら演目を変えたのかな? はっきり覚えてないんですけど。でも、やるやらないって話も出てて、私もこんな時に演劇なんか演ってていいんだろうかってすごく思ってた時期でしたね。それでとにかくずっと泣いてました。結局、本番は演ることは演ったんですけど、あんまり記憶に残ってないですね。

──話変わりますが、先日田植えをされたと聞きましたが?

百花:やった。やった。楽しがった〜。
神戸ってなんかきらびやかなイメージがありますけんども、私が住んでたとこはどっちかっていうと自然の多いところだったから田植えの経験もあったんです。今回多分小学校以来の田植えだったかな? 靴下で入って行ったんですけど、最初は思ってたより深くって足取られるし大変だったんです。
でも指導して下さるおじさんの真似をしていたらすごい楽しくて、結構手際も良くてこれは筋トレになるなっと思って。内転筋意識しながら一人でやってたら、すげえ上手だって言われて「あ、嬉しいな」っと思って楽しかったです。

──その時のメンバーは?

百花:谷、東谷、内田、宮地、井上さん、私の6人です。

──みなさん、真面目にやってましたか?

百花:谷は最初やらなかったんですけど途中からはやりだしたみたいな(笑)

──今回の作品や役について聞かせていただけますか?

百花:みんな喋ってることかもしれないんですけども、青春の物語。今回オーディションでよんだ4人だけが主役って訳ではないんですが、主軸は若い男の子でキラキラ! 青春物語! みたいな。福島の原発扱ってて何が繋がるねんって思うかもしれないんだけど、本当にキラキラしたとこもあるし。

私が初見で稽古した時に、書かれているのは1961年の話なんだけども「今の時代を生きてるからこそ」「結果が分かってるからこそ」読んでたら痛くなるようなところがすごくあって。私と同じように感じるかどうかわかんないんですけども、今を知ってるみんなにこの61年の話観てもらいたいですね。

もちろん、今回演劇だから事実だけをやるってわけじゃないんですけども、青春! みたいなところもあって、まあちょっとバカみたいなところもあって、みたいなところがとても楽しい。楽しめる作品になるんじゃないかな?

私の知り合いにも福島の出身で3月11日が近づいてくる度にちょっと鬱っぽくなるって方がいて、そういう方が観たい気になるかどうかはわからないですけど。
でも足を運んでもらったらまた違うかもしれないですし……違わないかもしれないんですけども、私としては観て欲しいなって思う作品になりそうだなっていうのは感じています。

──今回の役柄は百花さん的にはどうですか?

百花:実年齢より上の役でそもそも福島出身の役なんですね。今も頑張って福島弁で喋ろうとしてるんですね。方言という意味ではひとつハードルが高いところはあって、どうしても私は関西。神戸なんでちょっとイントネーションとか違ったりするんです。それでも福島にいた人っていうのでやってるので習得してこうと頑張ってます。ダルカラでは実年齢より上の役ってあんまりやった記憶がなくて、私のことを知ってる方が私と思わなかったら勝ちかなっと思います。

──観客の方へのメッセージをお願いします。

百花:私、そんなに喋りが上手いわけじゃねぇんで……メッセージって言ってもあれなんですけんちょも。なんとなくデリケートなのかなというとこもありつつも、全部分かってるわけではないけども過敏に反応することが嫌だったりするんですよ。

例えば福島産の……ってなった時に「えっ!」って反応をする人もいてもいいんですけど、自分はしたくないと言うか。今、お米が切れちゃってるんですけど、この前まで福島産のお米を買ってて、別にいいことしてるとかじゃなくて……過敏に反応するのがちょっと違うかなと自分では思ってます。

もちろん、人それぞれなんですけど、この作品もある部分ではちょっとデリケートな問題なのかなって今すごく思っていて。取り扱う時に、例えば劇場さんだとか役者個人個人でもそうだけど、腫れものに触るに近いようなことがあるのかなって感じていて。福島で初日を迎えるから実際身近で起こったことを、分かってる人の前で演るっていうことのある種プレッシャーはあります。

それでも、谷がこの作品をやりたい。福島のことを書きたい! ってなって、実際に今作品を作ってる最中なんですけど。何がいいとか悪いとかそういうところではない、何か答えが明確に出るものではないですけど、そこに人間ドラマもあるし、この物語に出てくる人たちは実在の関係者のほんの一部だけども、それでも色んな人の気持ちがあるわけで。

福島三部作っていうちょっと重めのデリケートなとこかもしれないけど、演劇だと言うことを忘れないで欲しくて。そこに出てくる人間模様だとか、エンターテイメント性だとかもある意味楽しんで欲しくって。

福島の話だからとか、難しいテーマ扱ってそうだなとか、敬遠してる人も含め本当に色んな人に観て欲しい。史実も演劇も人間がやってることだから、沢山の人に観てもらえたら嬉しいからどうか観に来て下さい。