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宮地洸成インタビュー

ーー故郷の思い出を教えてください。

生まれは葛飾。それからずっと実家の亀戸で暮らしています。所謂江戸っ子ですかね。最近になって自分の地元に愛着を覚えるようになってきました。第一部『1961年:夜に昇る太陽』では故郷を離れて東京を目指す若者を中心としたお話なので、故郷が重要なファクターになっているんですけど、自分はずっと東京にいてまだ実家暮らしって事もあって故郷っていうものに実感がなく、苦労したんです。その時、故郷や地元に愛着がなかったわけではなかったのですが、外に出ないから気づけていなかったんですね。

気づくきっかけとなったのは、先日、家の近くでやっていたあるお芝居を観に行って物足りなさを感じたときです。廃工場を劇場に再利用している半野外のステージだったので否が応でも周りの景色が目に入るし、そこから思い出される記憶、物語、歴史がとても大きかった。しかしそのお芝居は景色や劇場の特徴を物語の設定として借りているだけで、場所が持つ物語とは結びつかないように感じたのです。場所の歴史をそのまま芝居にするのがいいんだ、みたいな狭量なことを言いたいわけではありません。工夫の方法はいくらでもあるでしょうから。誰かのほうがよく知ってる場所や思い入れのある事柄について、外からやってきた人間が演劇を創ることの難しさですね。ま、その物足りなさのおかげで、逆に地元への愛着に気づけたわけなんですが……。

今回『福島三部作』って名前をつけて……さらにはそれを福島のいわきに持って行って演るわけです。いくら勉強したところで地元の人に敵うわけない。それは知識だけでなく、そこで過ごしたことの実感や記憶があるからです。それを承知した上で勿論、福島に寄り添う。知ろう。勉強する。のは当然としてもその上で東京の人間である自分だから出来ること。東京と福島を繋ぐ何かをもってこの芝居にのぞまなきゃいけないと思っています。

ーー25年後は何をしていると思いますか?

自分のことより日本の未来が気になるかな(笑)。生活に直結してるし……。
自分の年齢の倍以上先の事となると具体的にどうこうというイメージは難しいのですが、お芝居については……何らかの形で関わってると思います。観る側なのかもしれないとしても……。勿論、演れてればいいです。1年のうち1ヶ月は家に引きこもってゲームをする時間をとりつつ(笑)残りの11ヶ月はお芝居演っていたいですね。ビジョンなさすぎですか?

ーー演劇以外でひとつ好きなものをあげるなら?

散歩ですかね。どこかに行ったりして人だとか空気や匂いに触れるのも楽しいんですけど、家の周辺をただ歩くってことが好きですね。室内にいることが多いのでそれ以外の刺激を受けたい。色んな意味で空気を入れ替える様な気持ちでしょうか。今では地元への愛着を最も感じる時でもあります。

ーー震災の一番の記憶を聞かせてください。

正直に言ってしまうと自分くらいの世代で、しかも東京という被災地から離れた場所に暮らしていてその上実家暮らしで親にも守られているのもあり、震災というものはテレビやインターネットなどのフィルターを通して見たものでした。いちばんの記憶は地震後に流れ続けた某CMかもしれません。なのでリアルタイムで伝え続けられる情報になにか大変なことがとんでもないことが起きてるぞと感じつつも自身の生活ではさほど困ったこともなくて、実感が希薄だった様に思います。

だからこそって言うと変なんですけど、この福島三部作に参加することになってから、浪江まで実際に行って被災地を直に自分の目で見たり、現在進行系で続いている震災、復興従事者の現場、生活の実態を見る機会を得られました。あらためて震災、原発、電気、この国について自分自身に問いかけたり考え直すことも多くなりました。でも知れば知るほど、本当は日本に住んでいるひとみんなが考えなくちゃいけないことではないかと思うようになりました。だから普段は福島や原発に興味を持ってない人も、この作品がいい機会になったらと願いながら参加しております。

福島三部作、是非観に来てください。よろしくお願いします。