──順番に自己紹介をお願いします。
斉藤:斉藤直樹(さいとうなおき)です。ゆき男役です。
清水:清水直子(しみずなおこ)です。よし子役です。
結城:結城洋平(ゆうきようへい)です。黒猫役です。
瑞帆:瑞帆(みづほ)です。茶猫です。
橋本:橋本ゆりか(はしもとゆりか)です。とも美役です。
渡邊:渡邊りょう(わたなべりょう)です。けん太役です。
野村:野村由貴(のむらゆうき)です。まち子役です。
(※細井準さんは欠席)
──もう稽古が始まっているようですが何回目くらいですか?
瑞帆:8回やりました。
──(井上)裕朗さんの演出はいかがですか。
清水:楽しいです。
一同:うん。
清水:普段なかなか無いんですけど、一番最初にそれぞれの他の役に関しても色々ディスカッションして、役に対して想像力を膨らませて立ち稽古に備えて準備してっていうのが、すごく役立ってます。
瑞帆:最初の三日間くらいはずっとディスカッションをして、稽古の前後にも猫会議やったり家族会議やったり。
──そういうやり方って珍しいんですか?
一同:珍しいです。
斉藤:珍しいというか、彼らしいなというか。時間かけて色んな要素を出して用意してから、みんなで立ち上がろうっていう彼の意図だと思います。用意周到な感じがしますね。
──ディスカッションというのは例えばどういうことを話すんですか?
結城:時系列でこの時までにこういう事件が起きて、ということを裕朗さんがリストアップしてくれていて、この事件が起きるということはそれまでにこういう物語があったよね。ということを全体で共有してやるので、安心して立ち稽古できるというところが裕朗演出なのかなと。
斉藤:家で年表を作ってきてくれて。何年に知り合って結婚していつ子供が生まれて、みたいなことを一年ごとにみんなで想像で話して。
渡邊:もちろん家族だけじゃなくてお手伝いの高梨さんのこととかも話したりしましたね。
橋本:そういうことを考えて話して何の役に立つかわからないけど、きっと何かの役に立つはずだっていうコンセプトで。
──その時間が皆さんにとって大事だったんですね。
瑞帆:土台がそこで出来たから、立ち稽古に入って少々ずれかけても土台をみんなで共通で持っているので、誰か一人外れたりっていうのは全然ないし、作っていきやすいです、目的に向かって。
清水:目的がはっきりしてるから立ち上がりやすいというか。あとは、雑談から始まる普通の会話のエチュードからやって、そこから台詞に入っていって、ちゃんと相手と交流したところから場面に入っていくみたいなこともやって。
普段のほかの現場ではなかなか無いのですごく楽しいし、役に立ってます。読み合わせの日とかすごく緊張したんですけど、そういう交流から始まったので時間が経つにつれてリラックスできるし、楽しくなりましたね。
──この作品に対しては、どのような印象を持たれていますか?
清水:私ばっかり喋っていいですか?
一同:いいですよ(笑)。
清水:よし子さんが、うちの父にすごく似ていて。出方は違うところがあったとしても、自分の家族を思わずにはいられなくて。辛辣な部分もあるけど、観た人も必ず誰かに感情移入できる作品だなぁと思います。
斉藤:お父さんをやってと言われて最初は「お父さんねぇ……」と思ったんだけど、まぁ、猫もいるしね(笑)。60歳くらいの設定なんだけど、関係性が出来ればいけるかなと。
この作品をやりながら自分の家のことを考えたり、みんなの家はそうなんだとか、それぞれの家族によって違うんだなと思うと、こういう家族がいてもおかしくないよなと思ったりするし。
──猫はよし子さんの台詞を言ったりする場面もありますが、その辺りの難しさなどはありますか?
結城:最初に戯曲を読んだときに、母もやるってなるとすごく重荷というか、できないなと思ったんですね。でもやっていくうちに、よし子さんの分身としてやるというか、最初のディスカッションで共有できているので割とすっと入れるというか。
よし子がそのまま喋ってると思うとやりやすいですね。稽古場いくと直子さんがもうよし子そのままなので(笑)。おっちょこちょいだしチャーミングなので、やりやすいです。直子さんがよし子でよかったです。
瑞帆:私は以前にこの作品を観たことがあったので、黒猫と茶猫の役割もある程度わかっていたし、実際にやってみたときもそんなに大変さはなかったですね。
あとは演出家からのオーダーとどうすり合わせるかというところなので、重荷みたいなのはなかったのですが、シンクロし過ぎって言われてます(笑)。
結城:よし子さんとね、シンクロし過ぎっていうね。いまの課題ですね。寄り添い過ぎちゃって茶猫(瑞帆)が泣いちゃうっていうのとかね。
瑞帆:本当はこっちがよし子のために強くいなければいけないのに逆転しちゃってて。
──兄妹役のお二人は自分の役についてどう思っていますか?
橋本:私も兄がいて妹ポジションなので、とも美っていうキャラクターは私の性格からそんなに離れていない気がしています。
渡邊:僕は本を読んでて一番実感しやすいのはけん太ですね。レールから外れるみたいなところはまだよくわからないけど、性格とかは腑に落ちる部分が多いです。
橋本:彼は猫かぶってますね(笑)。最近わかってきた。
瑞帆:そうだよね、最近黒い部分が(笑)。
橋本:布かぶせてた部分が見えてきてる。
渡邊:いや、ないとは言えないけど(笑)。出してます、俺?
瑞帆:ゲームとかやってると出てくるよね。
渡邊:だってゲームは勝たないといけないから。
橋本:その執念が怖い(笑)。
渡邊:そんなに勝ちたい方じゃないですけど、ちゃんとやらなきゃと思って。
橋本:そう思って実際にできるのがすごいと思う。でもそこはけん太とは違いますね(笑)。
渡邊:稽古でシアターゲームとかやって、芝居とは離れた部分も利用するみたいなことをやってるんですが、この前、はっしー(橋本)に初めて「りょうちゃん」って呼ばれて。
橋本:人狼やってた時に、瑞帆ちゃんがりょうちゃんって呼んでるから私もつられて。
渡邊:今日も呼んでくれて嬉しかったです(笑)。
清水:私もゲームの時に瑞帆ちゃんのこと呼び捨てしちゃったり。
瑞帆:全然気づかなかった(笑)。
──野村さんは、けん太の奥さん役はいかがですか?
野村:私は部外者の役だからちょっと引いたところで見ないといけないのに、猫チームと一緒で結構シンクロしてしまってて。距離とらなきゃってなってます(笑)。けん太を通して見なきゃいけないのに、直子さんがよし子過ぎて、引力がすごいんです(笑)。
渡邊:舞台に出ていってよし子さん見たら息子になれるから。
清水:エチュードで台本に書かれてない部分をやってみようって色々やったんですけど、本当にそのことでも家族感みたいなのが……(隣の斉藤さんを見て)何笑ってるの?
一同:(笑)
斉藤:初めてのデートっていうシチュエーションで適当に雑談してみましょうってなって、「ヨットに乗りませんか?」みたいな話をしたりとか、そうやって自分で言ったことが頭に残ってるから「そういえば若い頃ヨットに乗ったなぁ」っていうのがうっすら共有できてて。
何でもいいんですけど、そういうこともあったなって。そういうのが重なってきて関係ができてきてるから、改めてよいしょってなんなくても会話ができるんですよね。それが井上君の計算なんだろうね。
──では最後に、チラシにもある「幸せって、何かしらねぇ?」という質問をさせて下さい。
渡邊:深いなぁ……。
結城:この作品をやっていて思うのは、人によって取り方は違うと思うんですけど、普段一緒に暮らしている家族とかに「ありがとう」って直接言えないなかで、この芝居にはそういうことがたくさん含まれていると思っていて、それを今できているのはすごく幸せだなって思います。
瑞帆:私は、自分の中で心の拠り所がちゃんとあることが幸せだと思います。
清水:やりたいことがあるっていうのが幸せだなって思いますね。
斉藤:続く、続いてるってことは幸せかな。きっかけはいっぱいあるけど、何か好きになったりして、それが続いてるってことは幸せだと思いますね。
渡邊:僕は、結局一人じゃないってことかな。一人になったとしても、その時に一人じゃないって思えること。
野村:私は、健康かな。
一同:確かに(笑)。大切。
野村:今日みんな元気で風邪もひいてなくて、いま一緒に話してて。それでいいかなって。
橋本:生きてるだけでまるもうけ、みたいな。現状とか嫌なことでも色んなことを受け入れるってことが幸せなのかな、と思いました。……言えた!
一同:(笑)拍手
──以上になります。ありがとうございました。