vol.24出演者紹介:大原研二

Birthday:1975/05/18 Birthplace:福島県 Height:178㎝
特技:教育勅語奉読 趣味:ドライブ、カフェ・古着屋巡り

獨協大学外国語学部英語学科卒業後、映像・大衆演劇などの経験を経て、2011年DULL-COLORED POPに所属。以降ダルカラを中心にミナモザ・劇団チョコレートケーキやプロデュース公演などに出演。TOHOKU Roots Project理事。ダルカラ演劇学校や個人で行うワークショップなどで講師も務める。代表作に『くろねこちゃんとベージュねこちゃん』(DULL-COLORED POP)、『福島三部作』(DULL-COLORED POP)、『彼らの敵』(ミナモザ)、『アウトレイジ』(北野武監督)、最近ではミュージカル『17AGAIN』にも出演。

Contents

Q1.演劇・俳優を始めたきっかけ:「高校生の頃にテレビで見た渡辺謙さんの演技」

なろう!と思ったのには特に大きなきっかけがあったわけではなく、大学在学中の就職活動で一生続けたい、続けられる仕事は何だろうと考えた時に突然「俳優」という選択肢が浮上してきたんですよね。それまで俳優に興味とか、芸能界にあこがれとか一切なかったのにホント突然に。

なので何でやりたい仕事を考えた時に「俳優」が浮かんできたのだろうと考えてみたところ、高校生くらいの頃にテレビで見た渡辺謙さんの演技が強く心に残っていたのだと気付きました。

そのドラマで謙さんは鍵師の役で、開錠するときの眼だけのカットがいくつかあって、その眼だけで少しずつ鍵がはまっていく過程や思考やいろんなことが伝わってくるのを感じて、演技ってこんなことができるんだと、演技というものを見る目が変わった経験が自分でも思ってなかったほど大きかったんだと思います。

Q2.好きなor影響を受けた俳優:「渡辺謙 、 國村準、大杉漣、佐々木蔵之介、梶芽衣子、ゲイリー・オールドマン」

渡辺謙=「演技」を意識するようになったきっかけの人
國村準=大人のあやしい色気
大杉漣=存在が好き
佐々木蔵之介=舞台を観るようになって最初に好きになった人
二代目 中村吉右衛門=親父の影響の「鬼平犯科帳」でぶったまげた
梶芽衣子=好き
永井愛=永井さんの描く人間が好き
長塚圭史=演劇の遊び方や、言葉の使い方についての影響がすごい
谷賢一=10年以上一緒にやってきて影響受けないわけがない
ゲイリー・オールドマン=学生の頃の影響が未だに
マーティン・マクドナー=「リーナン三部作」「スリー・ビルボード」本が面白すぎる
ジョン・パトリック・シャンリィ―=「ダニーと紺碧の海」「ダウト」「赤いコート」純粋さゆえに痛みを伴う人物たち
岸田國士=最近ようやく面白さが分かってきた

Q3.役作りや稽古の準備のはじまり:「どうなったらその役が幸せなのか考える」

どんな役でもまずはその戯曲の中でどうなったらその役が幸せなのか考えます。

大抵の場合そうはならないように書かれているので、そこは想像して書かれていないことを見つけていくことにりますが、そのために書かれている事実、役の背景、置かれている環境、人間関係、経済状況、時代などなど、事実として書かれていることをヒントにして戯曲を読んでいきますね。

とは言ってもそんなすぐにこれだ!ってことにはならないので、わかんないなーって事やなんか引っかかること、単純に面白いと感じることなんかをたくさん見つけて、最終的に自分が腑に落ちる「役の幸せ」を探す感じです。

ただ気を付けているのは、「役の幸せ」を自分の善悪や好き嫌いでは判断しないこと。善かろうが悪かろうがどんなにくだらなく思えるものでも今その役がそうできたら幸せだろうなと思えるものを探す。そいつを見つけてその役を幸せにしてやるために演じる準備ですかね。それがないと演ってて自分が何してるのか分からなくなるんですよね。

Q4.今回、俳優として挑戦したいこと:「普段とは違う表現に挑戦したい」

僕は職人気質なところがあるもんで、普段は戯曲という設計図に描かれた細かいところまで表現したいタイプなんですが、今回『プルーフ/証明』という戯曲でこのメンバーでだからこそそこに身を預けて、そのセッションの中で出てくる表現を重視したいと思ってます。言ってみればノリ。雑味・不安定さみたいなものかな。

『プルーフ/証明』は本当に人物や関係性が緻密に描かれ、あるいは緻密に描かれていないし、谷さんの翻訳も好き。そして他の舞台やオーディションで拝見して信頼できるキャストに囲まれてやる以上、普段とは違う表現に挑戦したいと思ってます。それはおそらく僕を一皮むいてくれる期待しかない。

めちゃくちゃ抽象的なことを言ってますが、そもそも結果が明らかな事に挑戦もないだろうし、一体何ができるか楽しみですね。

Q5.演技・演劇について最近考えたこと:「舞台上ではただ『行動』してろ」

それこそ耳にタコなくらいよく聞く話ではありますが、やっぱり舞台上って「行動」している人に興味が湧くんですよね。派手なことをしている人にはもちろん目が喜ぶし楽しいんですけど、そこまで。

でも行動してる人ってその行動の結果どうなるのかとかそいつが何をしゃべるのかとかさらに行くと生活の匂いなんかも感じたりするから五感が喜ぶ。少なくとも喜ばせてくれる可能性を感じる。庭劇団ぺニノの『虹む街』はそんな集合体に感じた。

「手放す」なんて言葉も演技してるとよく聞く言葉ですが、それも結局は板に乗る前は役の背景や環境的事実やら「超目的」やら「ビート」やらセリフの意味やら価値やらいろいろあるけど、舞台上ではただ「行動」してろってことなんだろね。

Q6.俳優としての座右の銘: 「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」

「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」(井上ひさし)

「役を被害者にしない。どんなことをしてでも幸せになろうとする。」(イヴァナ・チャバックがそんなようなことを言ってた)

「人は伝えたいことが伝わらないからしゃべる」(誰か)

「勇気・湯加減・ユーモアの3Y(一個hだけど)」(大学時代の友達)

Q7.最後に自由にメッセージを:「『愛』についての証明に全力で挑みたい」

『プルーフ/証明』は過去に2回谷演出の公演にスタッフとして関わったことがあります。もちろんどちらも演りたかったですが、ハルをやるには老けていて、ロバートをやるには若すぎる微妙な時期だったのでスタッフとして創作に携わりました。それまで海外戯曲をやる機会がなかった僕に海外戯曲の面白さをを衝撃とともに教えてくれた作品です。

翻訳家・谷賢一の才も相まってシンプルかつ奥深いシーンやセリフがたくさん詰まっている。僕はよい戯曲のことを思うとよく将棋を思い出すのですが、将棋の好手・良い手はその場限りではなくとても広くそして先まで効いていてどんどん奥まで届いている。そんなセリフや沈黙がよい戯曲には詰まっているように感じる。『プルーフ/証明』はそんな戯曲です。「会話劇の最高峰を創る」にはうってつけですね。

この戯曲を読むと、僕はとても愛を感じてしまいます。家族愛・恋人との愛・数学への愛・自分への愛。いたるところにそのかけらのようなものを感じるのに、誰もそれに形を与えられない、証明できない。そんな姿は世代・文化を越えて共感できるものだと思います。

今回、ほとんどすべての人が一度は証明したいと思ったことがあるであろう「愛」についての証明に全力で挑みたいと思っています。果たしてそれが可能なのかその過程も含めて見届け、応援してもらえたらと心の底から思います。

* * *

演出家コメント

最初に一緒にやったのが2010年ですから、もう12年の付き合い。大原くんはもともと僕より年上だし、精神的にも技術的にも非常に自立した俳優なので、対等な関係や目線で仕事ができるのが嬉しいです。

よくある勘違いですが、演出と演技指導ってのは全くの別物で、「この台詞はもう少し強く言って」とか「相手を見れてない」「固くなってる」とかは演技指導に入ります。いい俳優と仕事をしていると演技指導はしなくて済むようになります。それどころか非常に漠然としたことだけ言ったり、……これはイキウメの前川さんが一時期こんなやり方をしていたそうですが、「こういう感じのシーンが作りたい」「しかし僕には作り方がわからない」「だからみんなで考えて」と言って丸投げするとか、そういうことも可能になる。

これは非常にいい関係です。演出家は全体のプランを考えるのが仕事。こういう作品にしたいという夢を見て、その夢を座組と共有する。「座組に夢を見せるのが演出家の仕事です」なんて確か昔鴻上尚史さんが言ってました。なるべく大きな夢を描いて、さてそれをどう実現するかは、演技は演技の専門家である俳優が考える。スタッフワークはその道の専門家であるスタッフが考える。こうして誰も見たいことない作品、隅々までクオリティの高い公演が可能になる。

僕と大原くんはかれこれ12年、そういう作り方をしてきました。今回もどちらが上でも下でもなく、年の差も関係なく、僕は演出の専門家、彼は演技の専門家として作品に携われるでしょう。

いやしかしもう大原くんがロバートをやる年になるとは!

谷賢一(翻訳・演出)

クラウドファンディングのご案内

DULL-COLORED POP『プルーフ/証明』は2022/3/2(水)~3/13(日)、王子小劇場にて上演されます(配信あり)。

クラウドファンディングにご参加頂くと先行予約にご応募頂けます。また「成長を見つめるコース」にご登録頂くと、このページに書かれているような俳優のインタビュー・演技論・感想・変化などをメールマガジンでお届け致します。創作の過程を併せて体験して頂ければ何よりです。