vol.24出演者紹介:大塚由祈子

Birthday:1989/01/24 Birthplace:千葉県 Height:158cm
特技:ダンス(モダン・コンテンポラリー・ジャズ・バレエ)
趣味:花見・散歩・恋愛少女マンガを読む・オーディション番組を観る

ICU高校ダンス部・お茶の水女子大学舞踊教育学専攻と踊り漬けの学生生活を経て、卒業後は演劇の世界へ。培ってきた身体能力を武器に、身体表現を多く用いる演劇作品・映像作品に多数出演。2019年よりアマヤドリ入団。演劇プロデュースユニット「サキクサ」を主宰し、一人芝居や二人芝居などを上演。インプロ(即興演劇)で長編の作品を上演する「セカンドサークル」「インプロホリック」にも所属し、表現の探究を続ける。

主な出演歴

映画:『レディ・トゥ・レディ』(藤澤浩和監督)、『不安定なせいかつ』(石橋夕帆監督)
TV:『ものまねグランプリ2019』(安藤サクラのそっくりさん)
舞台:MMJプロデュース『ポセイドンの牙』@紀伊國屋ホール、ヒンドゥー五千回『空 観』@座・高円寺2、アマヤドリ『天国への登り方』@あうるすぽっと、ほか多数

Contents

Q1.演劇・俳優を始めたきっかけ:「布団の中で一人、アニメのスピンオフを演じる」

保育園のお昼寝の時間、布団の中にもぐって一人、アニメのスピンオフストーリーを演じるのが大好きでした。また、四歳でバレエを習い始めた途端、週末リビングに家族を集め、クラシックを流して即興で踊っていました。

そんな演じるの大好き&目立ちたがり屋な私を見かねた母が「これアンタ好きでしょ」と勧めてくれて参加した、千葉市民ミュージカルが初舞台です。そのまま演劇の魅力にとりつかれ、小中学生時代は子どもミュージカル劇団、大学でも英語ミュージカル団体(別班クレア役・水口早香さんとはこの頃からの仲間です)に所属していました。

大学卒業目前、「私には俳優の才能がないから」と、卒業後は表現教育の研究者を志していました。しかし、卒業論文が上手く書けず爆発し、留年したり休学したり全力モラトリアムしていた最中、知人が劇団を旗揚げし、出演しないか?と誘われます。そこで「下手だけどもう少しだけ演劇やっていたいな…」と思い、「もう少しだけ」を積み重ね続けて、気づけば今に至ります。

Q2.好きなor影響を受けた俳優:「小川絵梨子さん。 俳優ではなく演出家さんですが」

小川絵梨子さん。俳優ではなく演出家さんですが。

2008年、小川さんがニューヨークから帰国したばかりの頃にワークショップを受講させていただきました。シーンを始めるまでの準備にこれだけ時間をとってもいいのか。シーンが終わった後のフィードバックをこれだけ丁寧にやるのか。ひよっこ大学生だった私には刺激的すぎる体験でした。

2009年には演出助手という名目で、小川さん演出『動物園物語』の稽古場に忍び込んで見学しまして、「戯曲で役が何をしているのか」を俳優に体感させるような、遊び心溢れるワークの数々に、私もいつか俳優として小川さんとご一緒したい!と興奮しました。

演出作品では、シアター風姿花伝プロデュース×小川さんの『いま、ここにある武器』『ビューティ・クイーン・オブ・リナーン』、どちらも悔しいほど面白くてたまらなかったです。

Q3.役作りや稽古の準備のはじまり:「役の身体性を探る」

役の身体性を探るところから始めます。まず戯曲を読んでみて直感で思ったキャラクターの持っている性質をひとつ(三つ四つと欲張ると処理しきれず混乱しちゃうので)、身体に取り入れてみて、相手とシーンをやってみたらどうなるか。稽古場で身体を使って実験を重ねられるよう、試すアイディアを用意しておきます。

役の身体の方向性が見えてきたら、役として歩いてみると(例えば「駅から家まで」など、スタートとゴールを決めてメリハリをつけるようにしてます)、その身体における快・不快や思考のスピード感などを感じられるので、その気づきを稽古場に持ち帰ってみます。

いつだって周りから素敵だと思われたい人間でして、稽古場でも、気を抜くとすぐ「自分の思う理想形」を一発で出そうとするあまり、相手を忘れ、自分の演技プランに縛られ、結果遠回りになってしまうので、自分の不器用さを弁えて、焦らず一歩ずつだぞーと自分によく言い聞かせます。

Q4.今回、俳優として挑戦したいこと:「コメディエンヌとしてのレベルアップ 」

目標は、コメディエンヌとしてのレベルアップです。観客を「笑わせる」のではなく、「笑われる」「笑ってもらえる」瞬間を、一回でも多く生み出せるように、あの手この手を使って貪欲に探究していきたいです。

以前、アマヤドリ主宰・広田淳一さんに「クラブジャズを装ってどうするの? あなたは演歌だ!」と言われ、激しく同意したので、自分の持ち味を活かした演歌なクレアを模索していくつもりです。

また、稽古を重ねていく中で、やりすぎ・作りすぎで作意ばかりが残ってしまうという失敗をよくやらかすので、大切な軸を見失わずに足し算をし、柔軟に引き算できるようにしたいです。

戯曲に、役に、タップリと向き合えそうなので、存分にイメージを膨らませて、共演者とも多くのことを共有して、色鮮やかに物語の世界を立ち上げられたらと思っています。

Q5.演技・演劇について最近考えたこと:「演劇は愛で出来ている」

現在ちょうど公演期間中なのですが、日常生活のアレコレをすべて忘れて、本番中ただただ作品に向き合って、物語のことだけを考えていられる俳優は、観客を巻き込んで今ではない時間・ここではない場所へ飛んでいける俳優は、なんて、なんて、贅沢な職業なのだろうと、シアワセな演劇の時間を過ごせる有難さを改めて噛み締めています。

また、いつも本当に多くの人たちに支えられながら初日の幕が開くのですが、上演に向けて、出演者からスタッフまで一丸となって、より良いものにするべく進んでいく「演劇」という営みは、とても美しいなと感じます。

演劇は愛で出来ているんじゃないかしらと。

Q6.俳優としての座右の銘:「吊り橋を踊って渡れ」

私の父は、友人の結婚式のときにスピーチで「新郎○○くんは石橋を叩いて渡るタイプですが、私は吊り橋を踊って渡るタイプです」と言って、ドカンと笑いを巻き起こしたそうです。

その武勇伝を幼少期に何度も父から聞かされるうちに、私は不覚にもこの愉快なフレーズが気に入ってしまい、不安になるとすぐ石橋を叩いて渡り始める自分を、この言葉で鼓舞しています。

吊り橋が壊れて落っこちたみたいに落ち込む出来事があっても、「吊り橋だからしょーがないゼ! また楽しく渡っちゃおうゼ!」と私の背中を押してくれるポジティブの源です。

ちなみに俳優としてでなく、一人間としての座右の銘は、パウロ・コエーリョ『アルケミスト』の一節です。

“Be aware of the place where you are brought to tears. That’s where your treasure is.”
(涙が溢れてしまう場所を大切にしなさい。そこにあなたの宝物がある)

自分にとって大切な物は何か? 頭で考えすぎず、心に耳を傾けることを忘れずにしたいものです。

Q7.最後に自由にメッセージを:「サナギから白鳥に変わるような進化っぷりを、ゼヒ見届けてください!」

初めてダルカラ作品のオーディションを受けたのは2014年。7年越しでご縁が繋がり、有難きシアワセです。最強の仲間たちと共に、この戯曲に挑戦できる贅沢な日々を、存分に満喫しようと思います。

2022年春で本格的に俳優活動を始めてから、ちょうど10年になります。「才能がないから」と俳優を諦めようとしていた私が、この節目の年にクレアという役に出逢えたこと。運命のような、奇跡のようなものを、勝手ながらも感じてしまいます。

『天才には追いつけないかもしれないけれど、凡人は凡人なりに10年積み上げればそれなりのもんにはなるんだゼ!』とクレアに堂々と証明できるよう、全身全霊で臨む所存です。

創作のプロセスも見ていただけるようなので、カメのような歩みっぷりを、サナギから白鳥に変わるような進化っぷりを、吊り橋での踊りっぷりを、ゼヒ見届けてくださいませ!

* * *

演出家コメント

昨年とあるワークショップでご一緒しました。作家と俳優が平等にアイディアを出し合って脚本を作るワークショップで、子どもと性教育に関する難しい題材だったのですが、きっちり芯があり、ユーモアもある本を仕上げていました。その中で非常に知的な、抑制の効いた芝居をしていて、ぐっと興味を引かれました。元々アクティブでポップな顔はしっていたのですが、こんな顔もあったのか!と。

そこへ来て今回オーディションに正面から応募してきて下さり、今度はまたコントみたいな愉快な芝居をしていたのですが(笑)、昨年見た知性と合わせて一本アリ、知的かつ愉快なクレアが作れるかもしれない……と可能性を感じてオファー致しました。

笑いやユーモアの感覚のある人、積極的にトライしようとする人が僕はとても好きです。コメディに自信があるとか得意とか、そんな人は元々いません。みんな無数に、死ぬほどトライして、滑ったり爆死したりしまくり、その中で少しずつ笑いの呼吸やユーモアのセンスを手に入れていく。実はすごく尊いことなのです。

最近知ったのですが「俳優」の「俳」という字はもともと「人を楽しませる」という意味があるそうです。以前ルーマニア人の演出家チームと仕事をした際、血みどろの歴史劇が最後で突然ミュージカルになるので、「何でここで突然歌うんだ」と質問したことがありました。するとチームの音楽家は、「僕たちはアーティストだからね。みんなを楽しませなくちゃ」と言って僕にウインクしました。僕はハッと目が覚めたような思いがしたものです。

演劇はアートかエンターテインメントか、という旧弊な質問があります。答えは上に書いた通り。小難しい、難解なものもありますが、アートはもともと楽しいもの、人を楽しませるものです。大塚さんと一緒に楽しい『プルーフ/証明』を作りたいと思います。

翻訳・演出 谷賢一

クラウドファンディングのご案内

DULL-COLORED POP『プルーフ/証明』は2022/3/2(水)~3/13(日)、王子小劇場にて上演されます(配信あり)。

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